179.多文化社会で働く(2)国際的な仕事をするには

日本で国際的な仕事をするには、5つの領域があります。1つめは、海外展開している日本企業の国際業務です。営業・マーケティング、輸出入、海外拠点の支援業務などがあります。海外売上比率が高い業界としては、自動車、エレクトロニクス、機械などのメーカーや商社などが挙げられます。

2つめは、外資系企業の日本法人です。外資系企業は日本国内向けの営業・マーケティングが中心なので、海外勤務の機会は、実は多くはありません。3つめは、留学生や外国人労働者を支援する仕事です。日本語教師、留学生支援、外国人向け人材サービス業などが挙げられます。

4つめは、公的機関です。大使館、国際公務員、国際的なNGOなどが代表的です。最後の5つめは、インバウンド観光客向けの仕事です。旅行・宿泊・観光施設・通訳ガイドなどが考えられます。

178. 多文化社会で働く(1)グローバルリーダーシップとは

6月に書籍『キャリア・アントラージュ 社会で役立つスポーツ選手の育て方』(田中研之輔、山岸慎司の共著)を刊行しました。本番組でもスポーツ選手のキャリア形成について、ときどき発信していますが、ご興味あれば手に取っていただければと思います。

さて今回は、前月の「異文化理解を高める」の続きで、「多文化社会で働くためのリーダーシップ」について考えます。グローバル社会でのリーダーシップとは、単に英語コミュニケーション力ではなく、「多様な人々をつなげる力」です。

さまざまなタイプのリーダーシップがあり、必ずしも「強いリーダー」である必要はありません。多文化間では、言葉に出して説明し、多様な価値観を調整して、チームとして結果を出すことがリーダーに求められます。

177.異文化理解力を高める(4)英語力と異文化適応のU字カーブ

異文化対応では、多くの場合、英語でのコミュニケーション力が必要です。英語力の指標としては、TOEICが広く使われています。例えば、大手企業が新卒大学生に期待するのはTOEIC600点です。これは足切り点なので、海外関連の仕事をしたい人は700点以上が必要です。若いうちに英語力を身につけられると、キャリアの選択肢を広げられます。

また、新しい文化環境に入った人の心理状態は、①ハネムーン期、②カルチャーショック期、③回復期、④安定期のように変化すると言われます。もし職場で、カルチャーショックを受けていそうな外国人がいたら、あなたはどのように対応するでしょうか。

176.異文化理解力を高める(3)異文化適応能力(CQ)とは

異文化に適応する能力をCultural Intelligence Quotient(社会的知能指数、CQ)と言います。メタ認知CQ、認知CQ、動機CQ、行動CQの4つの要素から構成されます。CQは、知識だけでなく、意欲や行動まで含む総合的な能力で、経験と振り返りによって高められる点が重要です。3つのケースワークを通じて、CQを理解していきます。

また、異なる文化による違いを、単に妥協して調整するのではなく、違いを活かして新しい価値を生み出すことを「異文化シナジー(相乗効果)」と言います。多様性に富んだチームは、同質的なチームよりも生産性が向上するという研究が多くあります。仕事においては、多様性を活かし、より良い成果を目指したいものです。

175.異文化理解力を高める(2)日本はハイコンテクスト文化

文化には、「見える文化」と「見えない文化」があります。氷山の海面上と海面下のイメージで、見えない部分の方が大きいものです。日本の例では、富士山、寿司、着物、アニメなどが見える文化です。社会マナー、本音と建前、接客の精神などが見えない文化です。相手の文化には見えない部分があることを理解し、見える部分だけで判断しないことが大切です。

また、日本やアジアの国は「ハイコンテクスト(高文脈)文化」と言われ、はっきりと言語化することが少なく、お互いの空気を読む文化です。その反対に、アメリカ、オーストラリアなどは「ローコンテクスト(低文脈)文化」と言われ、言葉で伝える文化です。多文化間では、明確に言語化する「ローコンテクスト」を心がける必要があります。

174.異文化理解力を高める(1)内なる国際化の進展

6月はグローバル化に対応するための「異文化理解力」について考えます。近年、日本国内でも、外国人との接点が急増しています。あらゆる仕事において、異文化を理解した上で業務を進めるスキルを高める必要があります。

今回は日本国内の国際化の進展を確認します。留学生は、過去10年で約2倍の33万人になりました。外国人労働者は同時期に2倍以上増え、230万人です。訪日外国人観光客はなんと4000万人を突破しました。いずれも、今後さらに増加の見込みです。

特に観光では、世界の観光魅力度調査で、日本が常に上位になっています。自然が豊かで、食事がおいしく、安全であるといった日本の良さが認められています。あなたは「日本はどういう国か」「日本人の特徴は何か」と聞かれたとき、どのように答えるでしょうか。

173.東南アジアに学ぶ(4)豊かで幸せな国ブルネイ

ブルネイは、石油や天然ガスを産出し、世界で最も豊かな国の一つと言われます。王様(スルタン)が統治する敬虔なイスラム国家です。一人当たりGDPは日本と同レベルの先進国で、所属税がほとんど無く、医療や教育も無料です。

イスラム国家の特徴として、国内でのアルコール販売はできません。また、一夫多妻制度も認められています。観光にも力を入れており、水上都市のボートツアーや熱帯林のエコツーリズムの人気があります。暑い国で経済的に豊かなので、みんながのんびりしていて、生活に余裕がありそうです。

172.東南アジアに学ぶ(3)マレーシアの経済と社会

マレーシアは東南アジアでは人口が多い国ではないため、戦略的に差別化を図っています。「ルック・イースト戦略」では、主に日本企業の労働倫理(勤勉さ、時間厳守)や組織文化(チームワーク、長期雇用、改善活動)を導入し、工業化に成功しました。

また、2010年に「アジアの教育ハブになる」戦略を打ち出し、インターナショナルスクールを大幅に増やし、日本を含む世界各国から留学生を呼び込んでいます。私の知人が経営するスクールの教育方針は、少人数クラスで個性を伸ばすという、現代のニーズに合致したものです。

 

171.東南アジアに学ぶ(2)マレーシアの多文化共生

マレーシアは、1963年に英国から独立してから急速に経済発展し、一人当たりGDPで12,000ドルという先進国レベルまで到達しました。英国統治下では、スズ鉱山と農業プランテーション(天然ゴム、油ヤシ)が主産業の発展途上国でした。

しかし独立後は、マハティール首相の「ルック・イースト(東アジアに学べ)戦略」でエレクトロニクスや自動車などの産業誘致に成功し、製造業が成長をけん引しました。また、マレー系70%、中華系23%、インド系7%という多民族・多宗教の国家が、うまく多文化共生することで、安定した社会を形成しています。

170.東南アジアに学ぶ(1)シンガポールの国家戦略

5月は「多文化社会のあり方」について、シンガポール、マレーシア、ブルネイから日本が学べそうなことをお話します。シンガポールは、建国の父といわれるリー・クワンユー首相の強いリーダーシップによる巧みな国家戦略で発展を遂げました。

リー首相は、多様性のある社会の秩序を維持するには、厳格な法治主義と実力主義が必要であると考えました。法治主義については、ルールを明確にして、違反したら罰金をとることで、規律を維持しています。例えば、道にゴミを捨てると8万円以下の罰金です。

また、実力主義により、汚職防止や女性活躍も実現しています。シンガポールでは働く女性が、フィリピン人の住み込みメイドを雇用することも一般的です。